認知症対策として近年注目されている「家族信託」。
テレビやインターネットで見かける機会も増え、「認知症になる前に家族信託をした方がいい」と耳にした方も多いのではないでしょうか。
しかし、家族信託はすべての人に向いている制度ではありません。
制度の特徴を理解せずに契約すると、「成年後見制度の方がよかった」「遺言書で十分だった」というケースもあります。
実際、当事務所へご相談に来られた方でも、家族信託よりも「任意後見制度」を利用した方がよいケースだった。ということは多くあります。
この記事では、家族信託の仕組みやメリット・デメリット、どのような人に向いているのかを行政書士がわかりやすく解説します。
家族信託とは?
家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族に託し、自分の希望に沿って管理・運用・処分してもらう制度です。
例えば、
・自宅
・アパート
・預貯金
・賃貸経営に関する財産
などを対象にすることができます。
認知症などによって判断能力が低下すると、不動産の売却や預金の解約などが難しくなることがあります。
家族信託は、そのような事態になる前に契約しておくことで、家族が財産管理を継続できるようにする仕組みです。
認知症になると困ること
認知症になると、
・自宅を売却できない
・アパートを修繕できない
・賃貸契約の手続きができない
・銀行口座が実質的に利用しづらくなることがある
・相続対策を進められない
など、多くの問題が発生します。
特に不動産を所有している方は、大きな影響を受けることがあります。
家族信託が向いている人
家族信託は、次のような方に向いています。
不動産を所有している方
認知症になった後でも、不動産の売却や建替え、修繕などを家族が行えるようになります。
賃貸経営をしている方
アパートやマンション経営をしている場合、契約や修繕などの判断が必要になります。
家族信託によって管理を継続しやすくなります。
将来の財産管理を家族へ任せたい方
元気なうちから信頼できる家族へ管理を任せる準備ができます。
相続後の財産承継まで考えたい方
家族信託では、一定の範囲で財産を「次に誰へ承継するか」まで設計できる場合があります。
家族信託が向いていない人
一方で、次のような場合は別の制度が適していることがあります。
財産が預貯金中心の方
比較的シンプルな財産構成であれば、任意後見契約や遺言書で十分なケースがあります。
家族関係が複雑な方
受託者となる家族に権限が集中するため、他の相続人とのトラブルになる可能性があります。
信頼できる受託者がいない方
家族信託では受託者が重要です。安心して任せられる家族がいない場合には慎重な検討が必要です。
家族信託のメリット
・認知症後も財産管理を続けられる
・成年後見制度より柔軟に財産管理ができる場合がある
・信頼できる家族を自分で選べる
・遺言書などと組み合わせることで相続対策もしやすい
家族信託のデメリット
・契約内容が複雑で専門知識が必要
・契約書作成や登記などの費用がかかる
・節税制度ではない
・家族間で十分な理解がないとトラブルになる可能性がある
家族信託だけでは足りないことも
家族信託は万能ではありません。
例えば、
・医療行為への同意
・介護施設への入所契約
・身上監護
・亡くなった後の各種手続き
などは家族信託では対応できません。
そのため、
・任意後見契約
・遺言書
・死後事務委任契約
などを組み合わせて利用するケースが多くあります。
家族信託の法的根拠
家族信託は、信託法に基づく制度です。
なお、「家族信託」という名称は法律上の正式名称ではなく、家族を受託者として利用する民事信託の通称です。
信託口口座の開設には注意が必要です
家族信託では、受託者が信託財産を適切に管理するために「信託口口座」を開設する場合がほとんどです。
しかし、多くの金融機関では、信託口口座を開設する際に、公正証書で作成された信託契約書の提出を求めています。また、金融機関によっては、専門家が作成・関与した信託契約書であることを口座開設の条件としている場合もあります。
そのため、ご自身で作成した信託契約書では、信託口口座を開設できないケースがあります。
さらに、金融機関ごとに取扱いが異なり、
・家族信託を取り扱っていない金融機関がある
・信託契約書の記載内容について事前審査が行われる場合がある
・受託者や信託の内容によっては口座開設が認められない場合がある
など、事前に確認しておくべき点が少なくありません。
家族信託は契約書を作成すれば終わりではなく、契約内容が実際の運用につながることが重要です。そのため、契約を締結する前に、利用予定の金融機関へ確認し、信託実務に詳しい専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。
まとめ
家族信託は、認知症対策として非常に有効な制度ですが、誰にでも最適な制度ではありません。
財産の内容や家族構成、将来の希望によって、
・家族信託
・任意後見契約
・遺言書
・成年後見制度
のどれが適しているかは異なります。
大切なのは、「家族信託が流行っているから契約する」のではなく、ご自身やご家族に合った制度を選ぶことです。
行政書士オフィスさららでは、ご家族の状況や財産内容を丁寧にお伺いし、家族信託だけでなく、任意後見契約や遺言書も含めた最適な認知症対策をご提案しています。
認知症になる前だからこそできる準備があります。お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人

行政書士 福家 知代子(行政書士オフィスさらら)
滋賀県大津市を中心に、相続・遺言書作成・任意後見契約・家族信託・死後事務委任契約など、終活に関するサポートを行っています。
「何から始めればいいかわからない」という方にも、制度の違いやメリット・デメリットをわかりやすくご説明し、ご家族の状況や財産内容に合わせた最適なご提案をしています。
家族信託は認知症対策として有効な制度ですが、すべての方に適しているわけではありません。当事務所では、家族信託だけでなく、任意後見契約や遺言書なども含めて、お客様に合った終活・認知症対策をサポートしています。
よくある質問(Q&A)
Q1. 家族信託とは何ですか?
A. 家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族に託し、管理や運用、処分を任せる制度です。認知症などで判断能力が低下した場合でも、あらかじめ決めた内容に沿って家族が財産管理を続けることができます。
Q2. 家族信託をすれば認知症になっても安心ですか?
A. 財産管理については大きな効果がありますが、すべての問題を解決できるわけではありません。
家族信託は財産管理の制度であり、医療行為への同意や介護施設への入所契約などの身上監護は対象外です。そのため、任意後見契約などと組み合わせることが多くあります。
Q3. 家族信託は誰でも利用できますか?
A. 判断能力が十分にあるうちに契約する必要があります。
認知症が進行して契約内容を理解できない状態になると、家族信託契約を締結することは難しくなります。将来に備えるためにも、早めの準備がおすすめです。
Q4. 家族信託と成年後見制度の違いは何ですか?
A. 家族信託は財産管理を目的とした制度であり、成年後見制度は本人を保護する制度です。
成年後見制度では家庭裁判所が関与し、後見人には法律上の義務があります。一方、家族信託は契約内容に応じて比較的柔軟な財産管理ができる点が特徴です。
Q5. 家族信託だけで相続対策は十分ですか?
A. 必ずしも十分ではありません。
家族信託は財産管理に適した制度ですが、相続人への財産の分け方を明確にするためには遺言書が必要になる場合があります。ご家族の状況に応じて、家族信託・遺言書・任意後見契約などを組み合わせることが大切です。
Q6. 家族信託にはデメリットもありますか?
A. はい、あります。
契約内容が複雑で専門的な知識が必要になることや、契約書作成・登記などの費用がかかることが挙げられます。また、家族関係によってはトラブルにつながる可能性もあるため、制度の特徴を十分に理解した上で利用することが重要です。
Q7. 行政書士に相談するメリットはありますか?
A. ご家庭に合った制度を比較しながら提案できることです。
「家族信託がよい」と決めつけるのではなく、ご家族の状況や財産内容、ご本人の希望を丁寧にお伺いし、
・家族信託
・任意後見契約
・遺言書
・死後事務委任契約
などを総合的にご提案します。
制度選びで迷われた際は、お気軽に行政書士オフィスさららへご相談ください。

